2018年の春、岡山県で開かれた補綴歯科学会に参加しました。
補綴(ほてつ)とは、入れ歯・被せもの・ブリッジ の総称で、歯科の学問の一分野。
岡山までは新幹線で5時間。往復で10時間です。
長い電車旅ですので車中で読む本として、書類や専門書、文庫本を合計5~6冊持っていきました。
歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン
今回、時間をかけて読んだのが補綴歯科学会がだしている「歯の欠損の補綴歯科診療ガイドライン2008」という書類。
108ページあって、入れ歯やブリッジ、セラミックを作るときの守るべき点が、論文データとともに載っています。
行きの新幹線で3時間ほどかけてじっくり目を通しました。
その中で、とくに興味深いのが「短縮歯列(たんしゅくしれつ)」というトピック。
ガイドライン82ページの
「遊離端欠損において、短縮歯列の概念の適用は、義歯装着よりも有効であるか?」という問いに
「遊離端欠損において、短縮歯列の考えは義歯装着よりも咀嚼機能に関しては推奨されないが、
審美性、快適性、患者負担の軽減、う蝕予防の観点からは推奨されてもよい」
という答えが載っていました。
わかりやすく説明すると、
「奥歯2本が無くなったとき、入れ歯をいれるのといれないの、どっちが良いの?」という質問に
「少し食べにくくなるけど、見た目、快適性、虫歯予防などの点を考えると、
奥歯2本程度無くなったぐらいなら、そのまま何もしなくてもいいんじゃないでしょうか」
と答えている文章です。
特筆すべきなのは
なんだ… そんなことか… と思うかもしれませんね。
ただ… 特筆すべきなのは、このガイドラインを作成しているのは “日本補綴歯科学会” つまり、入れ歯や被せもの・ブリッジ を研究している学会ということ。
83~86ページには、根拠となる論文も8個載っています。
論文のほとんどは、欧米のもの。
欧米は肉食、日本はお米がメイン、と食文化が違います。
「肉は噛みきる、お米はすりつぶすと、食事様式が違うので、短縮歯列は欧米では大丈夫だけど日本ではダメ」
という意見を聞いたこともありますが、日本人を対象としているのも東京医科歯科大学と岡山大学の論文、合計2つ載っていました。
岡山で開かれた学会でも1日目の後半に「短縮歯列への補綴介入のdecison-making」という演題で、このことが詳しく考察されていました。
歯周病で、歯が揺れている場合はあてはまらないでしょうし、奥歯のそれ以上の喪失を防ぐには何らかの手を打ったほうが良いかもですけど、「短縮歯列」は歯の治療をいろいろな方向にできる意味をもっています。