出血しているハグキ

歯を無くす一番の原因は歯周病。
歯周病は自覚症状を出さずにひそかに進行する厄介な病気です。

歯周病になるとハグキが腫れて血が出ます。
でも、どうしてそうなるのか、知ってますか?

「どんな戦いもまずは敵を知ることから」
あなたが歯周病を治したいなら、まずは歯周病について知ることが大切

そこでハグキが歯周病へ変化する理由と、歯周病が治るときの仕組みについて少しお話ししてみます。

 

歯周病になると、ハグキは腫れて、血が出ます

歯周病の原因は、歯とハグキの間に住み着いた3種類の細菌

3種類の細菌の出す毒素によって、歯の下にある骨が溶けてしまうのが歯周病です。

細菌をやっつけるのは血液中の白血球なので、原因菌をやっつけようと、ハグキに血液が集まります

一滴の血

すると、集まった血液により毛細血管が拡張して膨らみます。

パンパンに膨らんだ風船は、少しの刺激で割れますよね。

それと同じで、膨らんだ血管は少しの刺激ですぐに破れます。

破れた血管

ですので、歯周病になると出血するのです。

ちなみに、ハグキが腫れるのは、血管が膨らんでいるから

歯周病になったハグキが赤黒いのは、溜まった血液によるものです。

 

歯周病原因菌が住むのは「縁下歯石」

ハグキの下の歯石

 

さて、歯周病の原因菌が住むのは、ハグキの下にある「縁下歯石

縁下歯石はスケーラーという機械や、キュレットという器具で、場合によっては麻酔をしながら何回かに分けて取り除きます。

ものすごく深いところにある場合は “フラップ手術”  という方法で取り除いたりもします。

歯周病原因菌は「磨き残し」にもいます

磨き残しが多く生じる場所

歯周病の原因菌は歯ブラシで落とせなかった「磨き残し」にも生息します。

「歯磨きが大事って言われても、どうしたらよいのかわからない…」

という方には、わたしたちが歯磨きのコツをお話しし、歯間ブラシを使ったり、ハグキをマッサージする歯磨き法(バス法)にチャレンジしたりして二人三脚で進めていきます。

 

数週間~数か月に…

あなたの頑張りが功を奏し、徐々に「縁下歯石」と「磨き残し」が無くなると、歯周病の原因菌も少なくなります。

すると、身体がその場所へ血液を送る必要が無くなり、その結果、毛細血管が通常の状態に戻ります

膨らんでいた血管が元の大きさに戻るので腫れも引き、血管壁が丈夫になるので少しの刺激では破れなくなります。

血液量が適正になるとハグキの下にある骨の白さが浮き出て、ハグキの色は赤と白が合わさった色、すなわちピンク色になっていきます。

つまり、

「血が出なくなる」

「腫れが引く」

「ハグキがピンク色に」

という変化が現れます。

ここまでの期間は、短い人で数週間、長い人だと数か月

下は、冒頭の方の4ヶ月後の写真です。

歯周病が治ったハグキ

「歯間ブラシ」と 「ハグキをマッサージする歯磨き法」をして「縁下歯石」を取り続けた結果、見違えるように歯周病が治りました。

歯周病の治療は、期間がかかるので継続と頑張りが必要です。

でも、歯周病をしっかりと治してその後のメンテナンスをしていけば、何歳になっても自分の歯で食事を楽しめます。

歯周病の治療は大変ですが「何歳になっても美味しくお食事できる」という自分へのご褒美もあります

歯周基本治療後

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歯周病は、数か月単位で改善します

男の子とカレンダー

患者さんと医院サイドで、治療についてイメージの違いがあると、後々問題が起きることが多いです。

そこで、事前にトラブルを防ぐため、患者さんが勘違いしそうなことは、診療前によく説明して、誤解を解消するようにしています。

歯周病治療での誤解は、「治療を始めたらすぐに治る」「歯科医院に通院さえすれば治る」と思っている人が多いこと

歯周病は、高血圧や糖尿病と同じたぐいの生活習慣病です。

高血圧は「塩分を控えめにして、運動不足に気をつける」、糖尿病は「食べ過ぎないようにして、体重を減らす」など、生活習慣を変えないと良くなりません。

歯周病の場合、歯科医院に通院して「歯石除去」をしながら、「食後の歯磨きを丁寧におこなう」ように習慣を変えていくことが必要です。

また、高血圧や糖尿病も同じですが、治療を始めてすぐには治りません。

習慣を改善しながら通院して、徐々に良くなるのを待ちます。

「早く治ってほしい」と思う気持ちはわかりますが、身体の構造上、進んだ歯周病は数ヶ月単位でしか改善しません

「歯周病は急には治らない。徐々に治るもの」と思ってください。そのほうが、結果的に歯周病を治せます。

 

ひとつ例をあげてみます。

下の写真の方は歯周病を気にして来院されました。

血が出ているハグキ

お話しをうかがったところ、

「先生、わたしは3人姉妹の一番下なのですけど、 姉2人が歯周病で歯が抜けてしまって、入れ歯になっているんです。 わたしもそうなってしまうかもと考えると、怖くて…」

とおっしゃっていました。

歯周病は歯科医院での歯石除去と、ご自宅での歯磨きによって徐々に治っていきます。

染め出し後の状態と歯冠ブラシ

染め出しして歯磨きをチェックしたところ、綺麗に磨けているのですが自己流になっていました

残念ながらそのままでは歯周病は治りません。

バス法という歯磨き方法と歯間ブラシのことをお話しし、歯石除去と歯のクリーニングをおこないながら定期的にチェックしました。

1か月後のハグキ、2カ月後のハグキ

1ヶ月すると出血量が減って、2ヶ月経つと出血しなくなり、病状が安定してきました。

この方は「また悪くなってしまうと困るから、メンテナンスに通院します」とおっしゃって、月に1度来院されています。

 

歯周病の治療は保険が効き、それほど高額ではありません

歯周病の治療をしたいけど、保険は効くの? 治療費が不安…

​もしかしたら、そうお考えの方がいるかもですが、大丈夫。歯周病の治療は健康保険で出来ます。

歯周病は慢性疾患のため治るのには時間が必要で、数週間~数か月通院することが多いですが、保険が効くので1回の治療費はそれほど高くなりません。

初診時に、2,000円~3,000円。再診時は1,000円~2,000円程度です。

なお、歯周病の保険診療には厚労省の決めたルールがあり、おおまかな流れは下のようなかたちです。

※ 歯周病の治療をザックリ説明すると、”歯石除去と歯磨き練習の繰り返し” です。

歯周病は自覚症状の少ない初期での対応が大事

賢明なあなたなら、歯周病を放っておかないほうが良いことはもうおわかりですね。

痛みや揺れなど歯周病による症状が出るのは、相当進んだときからです。

ですので、歯周病は自覚症状の少ない初期での対応が大事

歯周病っぽいなと感じたら、わたし達にお任せを。早めにご来院くださいね。