保険の被せもの3種類

今回は、保険の被せものについてお話ししてみようと思います。

保険の歯でもきちんとお食事はできますので、「見た目へのこだわりが少なく、不自由なく食事できるようになれば良い」という人は、無理に自費治療をする必要はありません

保険診療はお金のある無しに関わらず万人が治療を受けられます。

若い人は歯の自費治療をする余裕がないかもです。

育ち盛りの子供がいて大変な主婦や、住宅ローンを背負いながら頑張って働いているお父さんにとっても、歯の自費治療は大きな出費かもしれません。

そんなとき、保険はとても有難い存在です。

 

保険の被せもの は、歯の位置によって種類が限定されます

健康保険証のイラスト

保険診療は国(厚生労働省)の決めた制約(材料の種類、治療の順序、治療の方法など)があり、保険の被せものは、歯の位置によって種類が限定されます。

と言われても、歯科業界の人たち以外は、なんだかよくわからないと思いますので、ひとつずつ解説します。

硬質レジン前装冠

硬質レジン前装冠の適用部位

前からから3番目までは「硬質レジン前装冠」という「金属フレームに白いプラスチックを貼った被せもの」の適用になります。
3割負担で約5000円です。

(レジンとはプラスチックの別称です。クルマの撥水コートなども「レジンコーティング」と呼ばれています)

​硬質レジン前装冠の治療例

根元が摩耗した硬質レジン前装冠

「前歯が黒くなってきたので、治せますか? 」 と来院された方です。

除去した硬質レジン前装冠

硬質レジン前装冠のプラスチック部分が薄くなり、下地の金属が見えた状態でした。

歯の形態を修正

除去して、プラスチック部分の厚みが適正となるように歯の形を修正します。

仮歯を装着

しばらく仮歯で様子をみながら、ハグキの治療(歯石除去やクリーニング)や他の歯の治療をおこないました。

完成した硬質レジン前装冠

その後、型どりして、もともと入っていたのと同じ硬質レジン前装冠をつくります。

セットした硬質レジン前装冠

セットしました。

定期的なクリーニングをしたほうが良いことをお話しし、メンテナンスへ移行しています。

なお、硬質レジン前装冠は「色調が不自然に見えることがある」「経年劣化し徐々に変色する」という性質があり、
審美性を重視する人には 「自費の被せもの(セラミック)」 をおすすめしています。

CADCAM冠

CADCAM冠の適用範囲

前から4番目5番目の歯は「CADCAM冠」という被せものの適用。

2014年より保険適用されたもので、高強度プラスチックのブロックを器械で削り出して作ります。3割負担で約5000円ほどです。

CADCAM冠は、厚生労働省に施設基準の申請をしないとを製作できないため、扱っていない歯科医院もあります。

CADCAM冠の治療例

打診痛がある歯

「右上が咬むと痛い」とおっしゃっている方のレントゲンを撮ると、2ヶ所ほど根の先に膿が溜まっていました。

レントゲン上の根尖病巣

まず、大きい膿から治療を始めます。

数回治療後、根のくすりが入り、大きい膿があった歯は咬んでも痛みを感じなくなりました。

第二小臼歯、小臼歯へ根管充填

手前の歯はまだ咬むと痛いので、そちらの根の治療もおこないます。

仮歯を装着

いったん、仮歯で様子をみます。

10日間ほど様子を見て、問題なかったので型どりしました。 セッコウ模型にして技工所へ渡します。

完成したCADCAM冠

1週間ほどで仕上がり、技工所から模型が戻りました。

CADCAM冠のセットは「接着処理」が必須。

セットしたCADCAM冠

歯と冠内面に表面処理剤を塗ってから、接着性セメントを使い、歯と冠を一体化させました。

横から見た、装着したCADCAM冠

綺麗にはいりました。

条件がそろえば、下顎大臼歯 CADCAM冠

大臼歯CADCAM冠の適用条件

保険診療は2年に1回、改定があり、内容がどんどん変わっていきます。

2018年の改定では、上下左右の最終奥歯が全てそろっていることが前提で、下の前から6番目の歯に、保険で白い被せものが出来るようになりました。費用は3割負担で約6000円です。

下顎大臼歯CADCAM冠の治療例

奥歯の虫歯

上の写真の方は、奥歯の被せものが外れて来院されました。

2018年以前は、この場所への保険の選択肢は銀歯のみ。
白いものを希望する場合、自費でセラミックをいれるしか方法がありませんでした。

ただ、今は条件がそろえば保険で「白い被せもの」(CADCAM冠)を選べます。

「この場所は、以前は保険は銀歯しか出来なかったのですが、今は保険で白い被せものも選べます」
とお伝えしました。

完成した大臼歯CADCAM冠

3割負担の方だと、銀歯は約3000円。白い被せものは約6000円。

CADCAM冠は、数年で割れてしまうこともありますので、

「白い被せものは銀歯と比べて多少高くなります。
また、見た目は綺麗になりますが長年使っていると割れることもあります。割れたら新しく作り直すことになりますが、どうしますか?」

とお話ししたところ、

「多少、強度が落ちても綺麗なほうが良いので、白いほうでお願いします」

とのこと。

CADCAM冠になりました。

国(厚生労働省)が貴金属価格の高騰でプラスチック系統の材料を導入し始めているのですが、いずれにしろ、白いほうが喜ばれます。

セットした大臼歯CADCAM冠

上の写真のようにセットしました。

自費のセラミックにすると8万円。
大臼歯CADCAM冠だと6000円ほど。

たとえ数年で割れて、何回か作り直したとしても料金的にはセラミックの数分の一で済みます

最初にお話ししましたように上下左右の最終奥歯が全てそろっていることが前提で、前から6番目の歯への適応と、条件が限定されるのですが、おすすめしている被せもののひとつです。

金銀パラジウムクラウン

金銀パラジウムクラウンの適用範囲

上述のように、最近はいろいろな場所が保険で白くできるようになりましたが、残念ながら金属しか適用できないところも存在します。

その場所は奥歯。

強度の点から、金属しか保険で認められていません。

ですので、前から6番目7番目8番目は「金銀パラジウムクラウン」という「金属の被せもの」 になります。

費用は3割負担で約3000円です。

金銀パラジウムクラウンの治療例

左右奥歯の虫歯

「上下の奥歯に穴があいてきて、ズキズキ痛いんです」と来院された方です。

数年ぶりの歯科受診で大きな虫歯がありました。

レントゲンを撮ったところ、虫歯が神経に届いた状態。

レントゲン上の虫歯 ⇒ 根管充填後

ズキズキ痛むのは神経に細菌が侵入したからです。残念ながら神経の保存はできず、根の治療になりました。

麻酔をしたのちに神経を除去し、3回、根の治療をおこないました。

根の中が綺麗になり不快症状が取れたあと、充填材で根管を封鎖しています。

仮歯をつけた状態⇒全部鋳造冠をセット

その後、仮歯をいれ様子をみましたが、大丈夫でしたので「金銀パラジウムクラウン」をセット。

メンテナンスへ移行しました。

条件がそろえば、高強度硬質レジンブリッジ

高強度硬質レジンブリッジの保険適用条件

保険診療は厚生労働省が決めたルールで運営されていて、2年に一度、改定されます。

2018年の保険改定では、いろいろ新しいものが保険適用され、そのひとつが「高強度硬質レジンブリッジ」

グラスファイバー繊維によって強度を補強したプラスチック製のブリッジです。

(レジンと言うのは、プラスチックの別称)

これによって、上下の奥歯が全てそろっている条件を満たせば、前から5番目の歯が抜けたときに、保険で白いブリッジができるようになりました。

高強度硬質レジンブリッジの説明文

3割負担の方だと、型取りするときに約6000円、装着するときに1万4000円ほどの費用です。

なお、金属と比べて強度が落ちますので、長年使用すると壊れることがあります。

高強度硬質レジンブリッジの治療例

残根の歯

他院で「歯が縦に割れて、抜かないといけない」と言われて転院してきた方です。

調べたところ、歯根破折を起こしていました。こうなるともう抜かないと治せません。

その旨をお話しし、納得していただいてから抜歯させていただきました。

さて、抜いた後にどうするか。

今回の抜歯は下の5番。

幸いなことに、上下すべての奥歯があるので「高強度硬質レジンブリッジ」が適用できます。

「この場所は、以前は保険では銀歯のブリッジしか出来なかったのですが、今は保険で白いブリッジも選べます。
銀歯と比べて多少高くりますし、長年使っていると壊れることもありますが、どうしますか?」

とお話ししました。

すると、

「白いほうでお願いします」とのこと。

高強度硬質レジンブリッジの予定になりました。

完成した高強度硬質レジンブリッジ

抜歯して2か月経ったころ、型取りしてブリッジをつくります。

装着した高強度硬質レジンブリッジ

歯とブリッジに接着処理をして、専用セメントでセットしました。

横から見た高強度硬質レジンブリッジ

貴金属価格の高騰が原因で、国が保険診療のコストを下げるためにプラスチック系の材料導入を進めています。

金属より白のほうが綺麗なので、歓迎すべきことですね。

歯肉圧排法での型どり

圧排糸をいれているところ

保険も自費も、ほぼ全ての型どりに「歯肉圧排(しにくあっぱい)」という処置をしています。

歯とハグキのあいだに糸を挿入して型どりする方法で、糸によってハグキが外側に移動し、削った歯のラインが鮮明にでます。

通常のケースは1重、特殊なケースは2重にし、これをすると被せものの合い具合が良くなり、虫歯の再発を予防できます。

2重圧排の写真

いろいろな歯医者のホームページを見ると…

いろいろな歯医者のホームページを見ていると、マイクロスコープやインプラントなど、自費治療の優位性をうたっているものが多いです。

もちろん、わたしも自費治療をおこなっていますし、その良さを皆さんにお話ししています。

ただ、実際にWeb経由でいらした患者さんと話しますと、こうしてインターネットを見て歯医者を探している方の半数以上は
「そんなものすごい自費治療でなくて、保険診療をしてほしい」のではと思えます。

世の中それほど経済的にゆとりがある人ばかりではありませんし、患者さん全てに最先端の治療が必要ではないからです。

実際、お越しになる患者さんの半数以上はどこかが欠けた、取れてしまったなどの軽度の症状や、重度であっても保険治療を望む方々です。

そのようなこともあり、当院は保険診療をしっかりとおこなっています。

保険証と男性・女性