歯の神経

歯の神経の正式名称は「歯髄」、骨でいうところの「骨髄」です。

神経が無くなると歯への栄養供給が無くなり、だんだん歯が乾燥し、十数年後に割れてしまうことがあります。

割れてしまったら一巻の終わり、もう抜歯するしかありません。

イメージとしては 「神経がある歯」 は 生きている木 、「神経がない歯」は枯れ木

生きている木 枯れ木

生きている木はしなって なかなか折れませんが、枯れ木はポキッと折れます。

​歯も同じで、神経が無くなると細かなヒビが入り、限界を超えると折れてしまいます。

ですので、歯を守るため「できることなら神経を残したい」と常々思っています

神経をとる・とらない の基準

では「神経をとる・とらない」の私の基準を書いてみます。

私の基準は2つです。

虫歯の大きさ
神経を残すことによって、日常生活に影響がでるかどうか ←こちらも重視

虫歯が、神経に完全到達しているときは仕方ないですが、どうしようかと、判断に迷うのはギリギリまで虫歯が大きくなっているが神経には届いていない場合

その場合、象牙細管という細い管を通して神経が細菌感染していることがありますし、まったく大丈夫な場合もあります。

そこで、「覆髄」という神経を保護する処置をおこない、しばらく様子をみます。

神経を保護する薬

そして、日常生活で不都合を感じるようなら神経を除去。大丈夫だったら神経を保存、といったかたちですすめます。

神経をとらずにすんだ例

「1か月前から、上の奥歯がしみる」とおっしゃって来院された方です。

麻酔をして虫歯を除去したところ、思ったより大きな虫歯で、神経ギリギリでした。

虫歯をとって神経ギリギリの状態

第2象牙質の形成を促進させる、水酸化カルシウム製剤(神経を保護する薬)を敷いてからプラスチックを詰めました。

くすりの作用によって、第2象牙質(神経の防御層のような存在)が出来てきます。

クスリを入れて封鎖

虫歯が深く、しみる症状が継続する可能性があるので、しばらく経過観察へ。

​神経の有無で歯の寿命が変わるので、できることなら神経を保存したいです。

神経をとらないといけない状況について

さて、神経を残せるのは、あくまでも虫歯が神経に届いていない場合で、虫歯が神経に完全到達しているときは神経をとらないと治療できません

といっても、なかなかイメージできないと思いますので、一例をあげます。

下は「奥歯が咬むと痛くて。穴もあいてるんです」とおっしゃっていた方。

奥歯の虫歯

中等度の虫歯になっていました。

「すごくしみる」などの症状が無いので、”なんとか神経を残せるかも”と思いながら虫歯をとっていったのですが、

神経が露出

残念ながら、虫歯が神経に到達していました。

小さい穴なのですが、歯の神経は身体の通常組織よりも回復力がひくいため、この状態だと細菌に汚染されています。

あまり神経をとりたくないのですが、咬むと痛い症状を治すには「神経の除去」が必要。

こうなってしまうと仕方ありません。次回から根の治療となりました。

 

以下、2020年7月追記


虫歯をとって神経が露出したとき、以前は 全てのケースで神経を除去していましたが、

「歯がしみない」「噛んでも痛くない」
神経が生活している
(出血の量、神経の色などから判断します)

という条件にあてはまれば、「直接覆髄」(ちょくせつふくずい)という治療法で、神経を保存できるかもしれません。

詳しくは「露出した神経を保存」をご覧ください。

“歯の神経” の回復力がひくい訳

血液

手を切っても、絆創膏を張っておけば自然に治りますし、目にものもらいが出来ても、薬をぬって安静にしておけば治ります。

血液が集まり、白血球が身体に入り込んだバイ菌を退治するからです。

ところが、歯の場合すこし状況が違います。

歯根の先端

歯の神経(歯髄)への血管は、歯根の先にある 「根尖孔(こんせんこう)」という小さい穴から入ります。

「根尖孔」 は0.5mmぐらいの大きさなので、神経へ入る血液量はとても少量。血中の白血球も少ないです。

白血球が少ないとバイ菌を退治出来ないので、歯の神経は少しの細菌感染でも自然に治らないのです。

早めに歯医者へ

虫歯が小さいうちに来院していただければ神経をとることはありません。

「怪しいな、虫歯かな? 」と感じたら、早め歯医者にいらしてくださいね。