自費の入れ歯は厚労省からの制約が無いため、理想的な材料を使えます。
また、入れ歯作成に技工所がかける手間も保険と違います。
自費の入れ歯
入れ歯作りは、歯科医師と技工所が分担します。
歯科医師が良い仕事をしないと、上手い技工所が作っても合わない入れ歯になり、
技工所が入れ歯のバネやフレームを安易に作ると、歯科医師がいくら頑張ってもうまくいきません。
わたしは保険・自費関係なく高価なシリコン印象を使って精密な型どりをしますし、咬み合わせ平面の修正も保険・自費にかかわらずおこないます。
ただ出来上がってくる入れ歯は自費の方が良い出来です。
どうしてかというと、これは技工所がかける手間が違うからです。
入れ歯は保険・自費ともに手作り。
なかなかイメージがわかないと思いますが、これだけ近代化された時代なのにオートメーション化できない、非常に手間がかかる仕事です。
保険の入れ歯の技工料金は手間の割に低く、技工所は利益を出すために同時に何個も作らざるをえません。
それに対して、自費の技工料金は保険の約4~5倍。そのぶん技工所は1つの入れ歯に時間をかけます。
その結果、自費の入れ歯はしっかりした仕上がりになり、バネの入り具合などは保険より数段良いものとなります。
ちなみに、技工士の総数が減少しているなか、作業の煩雑さもあり、入れ歯を作れる技工所が少なくなってきています。
入れ歯を作る技工士の年齢は50~60代がメイン。 あと10年程経ち、その人達が引退したら一体どうなるのかと言われています。
自費の入れ歯のメリット① 食べ物の熱感・冷感を感じます
冬は暖かいお鍋を食べたいですし、夏は冷たいお蕎麦を食べたくなりますね。
食べ物の冷感・熱感は、お食事の大事な要素です。
保険の入れ歯はプラスチックなので食べ物の冷感・熱感がわかりにくくなりますが、
「金属床」というタイプの自費の入れ歯は、熱伝導率が高く食べ物の冷感・熱感を感じ、本来のお食事の感覚に近くなります。
自費の入れ歯のメリット② 磁石の使用で歯の寿命が延びます
保険の入れ歯に無いオプションとして自費での磁石があります。
磁石を使うと、通常なら抜歯しなければならない残根の歯を活用できます。
磁石を使用すると上図のように力の作用点が変わり、歯にかかる横揺れ力が減少します。また、歯を引き抜く力がかかると一定のところで外れる安全装置のような役割も果たします。
その結果、歯の寿命が延び、そのままなら1年持たないような歯でも5~10年近く保存することも可能です。
マグネット装置の治療例
「上の入れ歯が外れてしまうので、仕方なくポリデントを使ってます。
今まで入れ歯を何個かつくったのですが上手くいきません。
自費だと良いものが出来ると聞いたので、それでつくってもらえませんか?」
とおっしゃって来院した方の例です。
お口の中を見ると、上の歯は全て無くなっていて、下は前歯が数本残っていました。
上の入れ歯はご自分で義歯安定剤を貼り、何とか使用しています。下の入れ歯は合わないので使ってないそうです。
もう一度下の歯を見ると、健全な前歯が6本、残根状態の奥歯が4本です。
支台装置が多くなれば入れ歯は安定するので、「残根の奥歯4本をなんとか活用できないものか」と考えました。
残根は通常ならば抜歯ですが、マグネット装置としてなら利用できる可能性があります。
レントゲンを撮ったところ、幸いなことに3本ほど使用可能な状態。
1本を抜歯したのち、3本の根の治療をおこない、型どりしてマグネット装置をつくりました。
歯に磁石がついた後、入れ歯を作ります。
自費なのでチタンの金属床を使用しています。チタンは軽く薄く加工できるので入れ歯に最適です。
数日使用して入れ歯とハグキが馴染んだら、入れ歯にも磁石をつけました。
「今までの入れ歯は痛くて使わなかったけど、これは大丈夫そうです」とのこと。
その後も、快適に使用していただいております。
※術前術後には個人差があり、同様の治療結果を示すものではありません。
自費の入れ歯のメリット③ もっとも良い材料を使用できます
生体親和性や軽さの点から、生体にもっとも適した金属はチタン。ところが保険でチタンを使うことは認められていません。
自費には保険のような制約がありませんので、理想的な素材であるチタンを使えます。
自費の入れ歯の問題点
ただし、そのような自費の入れ歯にも問題点があります。
それは一生持つものではない、ということ。
ときどき「先生、一生ものだと思ってつくってみたいと思います」とおっしゃる方がいますが、
そのようなときは
「4~5年たつと合わなくなることもありますから、それを前提につくるものですよ」と
お話ししています。
自費・保険にかかわらず、入れ歯を使っていくとハグキは少しずつやせて、最初はぴったりした入れ歯も数年たつと合わなくなります。
そのようなときに保険の入れ歯なら裏面の張り替えで対応可能ですが、自費の入れ歯は裏面の張り替えに向いていません。
張り替え材料はプラスチックのため金属との接着性が悪いからです。
また、無理を承知で張り替えをしても、張り替え用プラスチックによって厚みが増し、自費の入れ歯のメリットである薄さや熱伝導性は失われます。
ですので、「自費の入れ歯は、5年ぐらいで作り替える気持ちがないと作ってはいけないもの」とわたしは思っています。
もしそれが嫌なら保険の入れ歯にしたほうが良いです。
自費の入れ歯 料金表
金属床義歯
フレームに金属(チタン)を使う入れ歯で、薄く・軽いので装着感が良いです。
プラスチックと比べて熱の伝わり方が自然なため、食べ物も美味しく感じられます。
予算に都合がつくのであれば、1番おすすめです。
価格 297.000円(税抜価格27万円、税金27,000円)
マグネット(状況により、金属床義歯に追加)
磁石によって入れ歯が落ちなくなり、残りの歯へ無理な力がかからず歯の寿命も延びます。
バネがないため見た目も良いです。金属床義歯と組み合わせます。
価格 1組¥38,500円(税抜価格3.5万円、税金3,500円)
※入れ歯本体の料金が別途必要です
<価格例>
¥297.000 (金属床義歯の値段)+ 1組¥38.500(キーパーと磁性体で1組)
自費の入れ歯治療例①
保険の入れ歯が割れることを繰り返していた方です。
前歯が揺れたのをきっかけに入れ歯が合わなくなり、新しくつくることになりました。
保険の入れ歯にすると、残り1本の歯に強い力がかかり、抜けてしまう可能性があります。
そのことをお話ししたところ、歯を守るために自費のマグネット装置を選ばれました。
咬み合わせ平面を整えてから、根管治療をし、マグネットを装着します。
金属床義歯によって入れ歯の耐久性が向上し、割れない入れ歯になりました。
治療期間は5ヶ月です。
自費の入れ歯治療例②
「上の入れ歯がパカパカするのと、前歯のハグキが下がっているのが気になります… なんとかならないでしょうか?」
とおっしゃって来院された方です。
ハグキが下がったのは歯周病になったから。
ですので、歯周病を治してから入れ歯を新製しました。
咬み合わせ平面を修正するため、まず、下の前歯にブリッジ、奥歯には保険の入れ歯をつくりました。
上の歯は残り1つになっています。
保険の入れ歯だと残り1本の歯に強い力が生じ、早めに抜けるかもしれないことをお話しすると、マグネット装置を選ばれました。
根管治療をしてからマグネットを装着し、金属床義歯を作ったかたちです。
歯周病治療とブリッジ製作に時間がかかり、治療期間は7ヶ月でした
自費の入れ歯治療例③
歯周病で歯を一気に失い、その後入れ歯が合わずに来院された方です。
経済的余裕のある方だったので、最初から自費の入れ歯をご希望でした。
今の入れ歯を利用して複製義歯をつくり数ヶ月間調整。落ち着いたところで新しい入れ歯(金属床義歯)を作りました。
上顎に残った1本だけの歯には、マグネットを装着しています。
治療期間は5ヶ月でした。