腫れて血が出ているハグキ

もう放送終了になりましたが「大改造 劇的ビフォーアフター」という番組が好きで、ときどき見ていました。

古い木造家屋、狭小住宅を建築デザイナーがリフォームしていく番組です。
人気があったので見たことある人が多いかもしれませんね。

番組の流れでは、まず住宅の外壁・内壁を壊し骨組みだけの状態にしていきます。
壁を壊して骨格だけの家になったとき、よく問題になっていたのがシロアリ。

家の骨組み

ボロボロになった柱を見ながら、住民の方が

「このまま放っておいたら、家が倒壊していたかも…」

「こんなことになっているなんて、まったく気づきませんでした…」

などコメントしていました。

「シロアリの怖いところは、外見上何の問題もないので悪くなったことがわからないこと」
というのがよくわかります。

その後、建築デザイナーのやる気に火がつき創意工夫で最新の快適住宅を作り上げます。

人気の番組だったので、今後は特番で放送してくれるかもですね。

 

「シロアリ」と「歯周病」の良く似た関係

抜けそうな歯

さて、シロアリによる被害の進み方。実はコレ、歯周病とそっくりなのです。

歯周病も、自分では何の問題も気づかないままひそかに進行し、悪くなったことがほとんどわかりません。

強いて言うとハグキから少し血がでるな~、といったぐらいです。

「歯が揺れて噛めない」

「ハグキが腫れた」

「歯が抜けた」

などの明らかな症状がでたときは、病状がけっこう進行していることがほとんど。

虫歯の場合は、しみる、穴があいた などの自覚症状をともなうことが多いので

「これはちょっとおかしいな」と感じて、早めに歯医者に来ることができますが

歯周病の場合、「痛い、噛めない、腫れた」などの自覚症状が出たときは手遅れ… といったこともあり得えます。

「じゃあ、どうしたらいいの?」

ということですが、

あなたにお勧めするのは、定期的に歯科医院で歯周病のチェックをすること

そして、歯周病にかかっていたらしっかり治すことです。

 

歯周病の大きな原因は、3種類の細菌

歯周病は “歯と歯グキのあいだ” に住む、レッドコンプレックスと呼ばれている3種類の菌( P. g 菌(Porphylomonas gingivalis)、T. f 菌(Tannerella forsythensis)、T. d 菌(Treponema denticola )が原因ということが現在わかっています。

原因菌のだす毒素によって歯グキを弱っていきます。

初期の歯周病は「歯肉炎」といい、歯グキが腫れた状態です。
歯肉炎を放置しておくと「歯周病」に進み、周囲の骨が無くなっていきます。

歯周病の進行図

​「歯肉炎」や「歯周病」になっているかは、歯と歯グキの溝(歯周ポケット)の深さを調べるとわかるので、まずその検査をおこないます。

歯周病が厄介なのは、”原因菌に効く薬が無い” ということです。

正常組織と病的組織の対比

食べたあとの汚れは、24時間たつと「​バイオフィルム」と呼ばれるヌルヌルの状態になり、バイオフィルム中の細菌には抗菌薬やマウスリンスが、ほとんど効かなくなります。

歯周病の治療は “歯と歯グキのあいだ” に溜まった汚れ(バイオフィルムと歯石)を物理的に落とし、原因菌の総量を減らすことです。

歯石について

バイオフィルムに唾液中のミネラル( カルシウム、リン酸、マグネシウム、カリウム など )が沈着し、石灰化によって硬くなったのが「歯石」。

縁上歯石と縁下歯石

歯グキの上にある歯石を「縁上歯石」、歯グキの下にある歯石を「縁下歯石」と呼び、問題なのは「縁下歯石」

「縁下歯石」に歯周病菌が住み着き、これが原因で歯周病がどんどん進行します。

右上の写真は、実際に歯周病で抜けた歯で、オレンジの〇の部分に縁下歯石がついています。

歯石は歯に強く付着しますので、除去には下の器具(「エアースケーラー」「超音波スケーラー」)を使います。

エアスケーラーと超音波スケーラー

「縁下歯石」がある場合、口の中を6ブロックに分けて、SRPという処置で歯石をとっていきます。

一度にすべての縁下歯石を取り除けないのは、保険診療の制約があるから

「歯周病検査」⇒「1~2回にわけて縁上歯石の除去」⇒「歯周病検査」⇒「6回にわけて縁下歯石の除去」⇒「歯周病検査」

というステップを踏まないと保険診療が認められません。​

なお、歯周ポケットが5mm以上の場合、通常の方法では歯石を取り残すことがあり、その場合、麻酔をしてハグキをめくって歯石をとることもあります。

(「フラップ手術(歯周外科)」といいます)

ただし、歯周病は歯石をとっただけではなおりません

 

ハグキをマッサージする歯磨き(バス法)と、歯間ブラシ

歯石をとっても、「ハグキをマッサージする歯磨き」と「歯間ブラシ」をしないと「歯と歯グキのあいだ」(歯周ポケット)に住む細菌が減らないからです。

ハグキをマッサージする歯磨きは「バス法」といって、毛先を45度にして細かく動かす方法。これによって歯周ポケット内の汚れを掻き出します。

また、歯の隙間が大きくなった場合、通常の歯ブラシでは60%程度しか汚れが取れなくなります。

そのような中等度以上に進んだ歯周病では、歯間ブラシも併用しないとです。

バス法と歯間ブラシと歯磨きのポイント

 

歯周病のメンテナンス

歯にまったく異常を感じない人でも半年~1年に1回は、歯周病予防のため歯医者に行ったほうが良いです。

どうしてかというと、歯石が溜まってしまうから

前歯についた歯石

歯石は「歯についた汚れが石灰化したもの」で、歯にこびりつくので自分の歯磨きでは取れません

歯医者にある専用の器具を使って除去しなければ、溜まるいっぽう。

たまった歯石をそのままにしておくと、歯周病菌が増加してしまいます。

「毎日、けっこう時間かけて歯磨きしてるのに歯が揺れてきた… 膿っぽいのも出ているし…、もしかして歯周病?」

そんなふうに、知らないうちに歯周病になってしまうなんて困るじゃないですか?

たしかに、歯医者に行くのはちょっと面倒かもしれません。

でも、あなたの歯は大事な自分の身体。

女性でも男性でも毎日、髪を整えたり、ひげをそったり身体のメンテナンスをかかさないと思います。

歯も一緒です。

定期的に歯石を除去して歯周病のメンテナンスを続けていけば、歯の寿命は確実に延びますよ。