人生80年の時代、60歳で歯が無くなると20年間食事しずらい状況。
70歳で歯が無くなっても残り10年もあります。

しかし、歯周病を治せば自分の歯でお食事できる年月はぐんと上昇。

きちんと治療すれば歯周病の進行は止まります

 

 

進行した歯周病の治療

歯周病は、人によって進行スピードが異なり、お手入れしてないのにほとんど進まない人もいますし、年齢が若くても進行する人もいます。

進行した歯周病では、「縁上歯石の除去」 ⇒ 「縁下歯石の除去」を7~8回かけておこないます

下は、歯周病が進みやすい方の初診時の写真です。

中等度の歯周病

最近、久しぶりにお会いした方なのですが、ハグキが下がっているのが気になり、

「歯周病が進んでいるかもしれないので、早いうちに見たほうが良いですよ」

と声をかけ、診療することになりました。

歯周病によって歯の周囲骨が無くなり、前歯が移動しています。(”フレアアウト”という症状です)

以前、他の歯科医院に行ったのですが、数回通院しただけで中断してしまったとのことでした。

歯周検査後の出血

歯周病の検査をしたところ7~9mmの深い歯周ポケットが点在。

それなりに進行した状態ですが、検査後の出血は少なく病状は落ち着いていました。
(検査後の出血が少ない場合、歯周病の活動性は低くなっています)

上顎について歯石

上顎は、縁上歯石がついています。

下顎についた歯石

下顎にも縁上歯石がついています。

レントゲン上からみる骨吸収

レントゲンを撮ったところ、上下左右の奥歯と下顎前歯に骨吸収がありますが、他の部位はそれほど問題ありませんでした。

染め出し後の口の中

歯磨き状態も比較的良好ですが、念のため歯間ブラシ」と、「バス法」という歯磨き方法を説明しました。

歯周病は、歯周ポケット内の細菌が出す毒素により進行します。

細菌は歯石に住むので、ハグキの下にある歯石(縁下歯石)を6回にわけて取り除いていきました

一度にすべての歯石を取り除けないのは、保険診療の制約があるからです。

「歯周病検査」
⇒「1~2回にわけて縁上歯石の除去」
⇒「歯周病検査」
⇒「6回にわけて縁下歯石の除去」
⇒「歯周病検査」

というステップを踏まないと、保険診療が認められません。

歯周基本治療後のハグキ

上の写真は一連の歯石除去治療のあとに、ハグキの検査をした直後です。
出血がほとんど無くなりました。

歯周基本治療後の上顎

歯周基本治療後の下顎

病状が安定したので、いったん終了。

治療期間は3ヶ月でした。その後メンテナンスに移行しています。

 

進行した歯周病を治して、ブリッジで連結したケース

中等度までの歯周病なら、歯が揺れても、被せて連結固定させることが出来ます。
(「歯周補綴」 と言って、わたしが得意としている方法です)

下の写真は
「1年ぐらい前から、歯が全体的に揺れてきて、ハグキ全体も腫れている感じがします。歯周病なのでしょうか?」

とおっしゃって来院された40代の方。

歯石が大量についた口の中

注射や機械音が苦手で、かなり久しぶりに歯医者にかかるとのことでした。

お口の中を拝見すると、一見して歯石が多いのがわかります。

歯周検査後の重度歯周病

歯周病検査をすると、歯周ポケットのほとんどが 5mm~7mmと深い状態で、歯グキ全体から出血がありました。

揺れている歯もあり、歯周病がかなり進んでいます。 「侵襲性歯周炎」 という状態です。

人口の10%程度の人は体質的に歯周病になりやすく、進行も早い、ということがわかっています。

このまま放置していたら、50歳になる前に、全ての歯が抜けてしまったかもしれません。
早めに来院していただいて良かったと思います。

上顎の虫歯

虫歯も数カ所ありました。

下顎の虫歯

唾液のミネラルが多いタイプだと、再石灰化しやすく虫歯になりにくいです。 その反面、歯石はたまりやすく、歯周病が進みがち。

歯周病の治療は、軽度なら数回通院して終わりですが、重度の場合は数ヶ月に渡っての治療が必要です。

今回はかなり進行しているので、半年~1年ほどの期間が必要かもしれません。

「かなり進んでいる歯周病なのですぐには治らないです。何本かは抜歯になるかもしれませんし、少なくとも半年以上の治療期間が必要になると思います」

とお伝えしました。

染め出し後

歯磨き不足がありそうなので、まずは染め出しをおこないました。

染め出しをすると、上のような状態でした。

歯のあいだ、歯の根元に多くの磨き残しがあります。この磨き残しのなかに歯周病菌が住んでいます。

歯間ブラシと歯ブラシ

歯周病の治療は、ホームケア(自宅での歯磨き)とプロフェッショナルケア(歯石除去と歯のクリーニング)に分かれます。

この状態でプロフェッショナルケアを始めても治りません。

「バス法」という歯磨き方法と「歯間ブラシ」について、お話ししました。

その後、歯石除去、歯のクリーニングをおこなっていきます。 量が非常に多いので、歯石除去のみで7~8回通院していだきました。

再度の染め出し

ときどき、染め出しもおこないます。 磨き残しはかなり減ってきました。

このような、歯磨きのチェック、歯石除去、歯のクリーニングを「歯周基本治療」といいます。

歯周基本治療の終了後

3ヶ月後、上のように綺麗な状態になりました。

歯周病によって保存不可能な歯

この方は歯周病が進行して歯の揺れがおさまらず、食事しにくい状態が続いていました。

ですので、ぐらぐらの前歯2本を抜歯してブリッジにする予定です。

段階をおって仮歯に置き換えます。

第2段階の仮歯

まずは、抜く歯の両隣りを仮歯にしました。

修理した仮歯

後日抜歯して仮歯を仕上げます。

ブリッジを作るために削った歯

ぐらぐらの歯を抜いてから1ヶ月半経ち、ハグキが回復したので本歯の型どりをおこないました。

セットしたブリッジ

本歯が出来上がりました。

合い具合は良かったのですが、咬み合わせに問題がありました。

仮歯のときはしっかり咬んでいたのですが、本歯では「オープンバイト」という咬み合わない状態になっています。

仮歯の咬み合わせ

仮歯のときは咬んでいます。

本歯の咬み合わせ

出来上がった歯は開口しています。

再製になった模型

おそらく技工所で模型を付着するときの位置が、実際と異なったのだと思います。

せっかくブリッジを作ってくれた技工士さんには申し訳ないのですが、再製です。

再び咬み合わせの記録をとり、技工所へ戻しました。

再製したブリッジを装着

再製したブリッジをセットしました。綺麗に入ったと思います。

治療が終わるまで約1年かかりました。

 

縁上歯石がついただけなら1~2回の通院で終わり

ひとくちに歯周病といっても進行程度により治療期間は異なります。

歯周ポケットが2~3mmと浅く、ときおり出血がみられる程度なら、1~2回の通院で終わることが多いです。

下は数年間歯石をとっていない方です。

軽度の歯石がついた口の中

前歯の着色が目立ちますね。

上顎の歯石

下顎の歯石

下の歯の裏側はとくに歯石がたまっていますが、これは舌の根元に唾液の出口があるからです。

歯周病検査をおこなったところ、数ヵ所少量の出血がありましたが歯周ポケットはすべて2mmで、ほぼ問題ない状態でした。

住み着いている歯周病菌が少ないか、歯周病への抵抗性が強い体質なのだと思います。
90%ほどの人の歯周病は歯石がたまっても進みにくく、仮に進行しても基本的な治療をすれば回復します。

2回の通院で歯石を全部とり、歯のクリーニングもおこないました。

歯石除去・クリーニング後の、綺麗になった歯

歯石をとって、歯のクリーニングをした後の写真。綺麗になったのがわかります。

歯石除去・クリーニング後の上顎

上の歯のあいだに、うっすら緑色に見えるのは、うがいで落ちなかったクリーニング粉。

歯石除去・クリーニング後の下顎

下の歯の歯石も全部とれています。

縁上歯石がついただけなら1~2回の通院で終わります。

歯を喪失する大きな原因は歯周病。

40代以上から症状が重くなる傾向がありますので、 長年 歯医者にかかっていない方はご来院をおすすめします。