骨粗しょう症のクスリ(BP系製剤)を飲んでいるときの抜歯
最近、骨粗しょう症予防薬のビスフォスフォネート製剤(BP系製剤)を飲んでいるときに抜歯すると、1万分の1程度の確率で顎骨が壊死する「BRONJ」という病気が話題になることがあります。
「抜歯のとき、BP系製剤は3ヶ月間休薬したほうが良い」
「いや、飲み続けたほうが良い」
など、いろいろな声があるのですが、わたしは「クスリを飲み続けたまま抜歯したほうが良い」と考えています。
怖いのは大腿骨頸部骨折
骨粗しょう症のクスリは骨折防止のため、お年寄りがよく飲まれます。
お年寄りの骨折で怖いのが大腿骨頸部骨折。
骨粗しょう症による大腿骨骨折は、要介護や寝たきりの原因の第3位です。
大腿骨頸部骨折が起こると40%の人は寝たきりとなり、その後の死亡率は、1年以内13%、2年以内25%、5年以内50%です。
つまり、BP系製剤を休薬した結果、不幸にして大腿骨骨折が起きてしまうと半数近くはそのまま寝たきりとなり、5年以内に50%の方が亡くなってしまいます。
抜歯のためとはいえ、クスリを止めてしまうのは大きなリスクです。
顎骨の壊死は発症確率の1万分の1、もし発症しても治る病気
それに対して、顎骨の壊死は発症確率の1万分の1程度と非常に低く、発症すると症状は重篤ですが2次医療機関(高崎近辺だと、高崎総合医療センターなど)で適切な処置をおこなえば治る病気です。
ですので、
「この薬を飲んでいるときに抜歯すると、ごく低い確率で顎骨が壊死することがあります。
ただ、クスリを止めると骨粗しょう症による骨折の危険性が増し、もし、不幸にして大腿骨を骨折した場合は寝たきりになる可能性もあります。
顎骨が壊死しても口腔外科に通院すれば治りますが大腿骨を骨折した場合、半数近くはそのまま寝たきり。
そのようなリスクがあるので、状況をご理解いただいたうえでクスリを飲んだ状態で抜歯したほうが良いと思います。
そして、もし顎骨の壊死が起きた場合、大きな病院の口腔外科にしばらく通院していただくかたちになりますが、よろしいでしょうか」
とお話しするようにしています。
メリットをデメリットを比較するとそのほうが良いのではないか、と思います。