「根管治療をしているのだけれど全然治らなくて… 」そうおっしゃって来院される方のお話しを伺うと、ラバーダムを使っていないことがほとんど。
その場合はラバーダムを装着して標準的な根管治療をおこなえばたいていは良くなります。
ただし、治る期間はその歯によって異なり、簡単に治るケースがあれば長引くケースもあります。
簡単ですがいくつか根管治療の実際例をご紹介しますので、ご来院の参考にしてください。
根管治療の実際例
ふたをすると痛む歯が、4回で治ったケース
「右上の歯を根管治療中だけど、いっこうに良くなりません。何とかならないでしょうか…」と来院された方です。
良くなるときもあるが痛くなってふたを外す、その繰り返しで2週間が経ち、だんだん鼻の横あたりも痛くなってきた、とおっしゃっていました。
お口の中を拝見すると、根管治療中のふたが外れています。
レントゲンを撮ると、根の先に膿がたまっていました。
初回は診査に時間を費やし、2回目からラバーダムをした根管治療をおこないました。
すると3回目には痛みが消失。
4回目の来院時に根管充填材(根の治療で最後にいれるクスリ)をいれることができました。
根管充填材が根の先に出てしまい不快症状がでる可能性があったので、
仮歯をつけて2週間程度様子を見ましたが、さいわい問題は起きなく、無事に歯を残せました。
強い炎症がある歯が、8回で治ったケース
「左下奥歯が根の治療途中になっていて痛くて… 痛くて…」とおっしゃって来院された方です。
1年前、他院で神経を抜いて根の治療をはじめたが、痛みがとまらず半年後に転院。
転院先の歯科で「根の先に膿がたまっている」と説明をうけて10回以上通院したが治らず、心配になって内田デンタルにいらしたかたちです。
噛むととても痛い状態で、治療途中の歯には綿のふたが入っていました。
レントゲンを撮ると、根の先に大きな膿がたまっています。
初回は診査をおこない、2回目からラバーダムをしての根管治療を開始。
根の先にたまった膿を出すことができれば、つらい症状が消えます。
ファイルという器具で根の先にたまったゴミを取り除く治療をおこないましたが、硬く固まっていて除去できず、膿は出ませんでした。
3回目の来院時には「首のあたりも痛くなってきた」とのこと。
ハグキの横から切開して膿を出そうと試みましたが、やはり排膿せず、骨髄炎に移行するのを防ぐため抗生物質を投薬しました。
4回目で根の先のゴミを取り除くことに成功し、根管内より排膿。
排膿したことで5回目の来院時は痛みがほぼ消失しましたが、まだ根管内より排膿があるため、再度消毒。
6回目、7回目ともに、歯の痛みは無くなっていましたが、排膿を認めるため消毒。
8回目の来院時に、根管充填材(根の治療で最後にいれるクスリ)をいれて、根の治療を終了しました。
なお、根管治療には毎回ラバーダムを使用しています。
かなり強い炎症が起こっていて4回目の治療までは症状がとれず、一時はどうなるかと思いましたが、無事に歯を残すことができました。
歯髄壊死した歯が、3回で治ったケース
「上の歯がすごく痛くなって神経をとらなければと思い、ラバーダムをしてくれる歯医者を探してたんです」
とおっしゃって来院された方です。
4か月前に左上の深い虫歯を治し、その際「虫歯が大きいので神経をとったほうが良いと思いますよ」と説明を受けましたが、
自分の希望で、無理を言って神経を残してもらったそうです。
レントゲンを撮ると左上奥歯に神経ギリギリの詰め物があり、これが原因で神経が死んでしまい、「歯髄壊死」という状態になっていました。
根管治療をして、死んだ神経を取り除く必要があります。
初回に診査・診断をおこない、2回目に根管治療を開始。
3回目には症状が消失し、根管充填材(根の治療で最後にいれるクスリ)をいれることが出来ました。
(根管治療には毎回ラバーダムを使用しています)
膿の出口がある歯が、7回で治ったケース
「奥歯のハグキの横が、腫れたり引っ込んだりを繰り返します。たぶん、根の病気と思うんです」
とおっしゃって来院された方です。
お口の中をみると、右下奥が腫れています。
レントゲンを撮ると右下奥歯の根に膿がたまっていて、被せものを除去して根管治療をすることになりました。
初回は診査をおこない、2回目来院時に被せものを除去。3回目よりラバーダムをして根管治療を始めます。
4回目、5回目、6回目ともにラバーダムをした根管治療をおこなったところ症状は消失。
7回目に根管充填材(根の治療で最後にいれるクスリ)をいれました。
ラバーダムを用いると根管治療中の唾液による感染が無くなり、高確率で治癒します。
根管治療中で噛むと痛い歯が、4回で治ったケース
「奥歯が根の治療途中になっていて、硬いものを噛むとひびきます。大丈夫か心配になってしまって…」
とおっしゃって来院された方です。
お口の中を見ると、左上奥歯が根管治療の途中になっています。
初回は歯の診査・診断をおこない、2回目よりラバーダムを使った根管治療を開始。
3回目には、ひびく症状が減少。
4回目には症状が消失したので根管充填材(根の治療で最後にいれるクスリ)をいれて、根管治療を終了しました。
ラバーダムは保険診療でおこなっています
インターネットを見ていると、ときどき「ラバーダムは保険診療では出来ません」と掲載している医院がありますが、そんなことはありません。
ラバーダムは基本診療料に包括されているので保険診療でおこなえます。ヤフー知恵袋に下のような記事がありましたので載せておきますね。
下のような記事も見つけました。
まさにその通りと思います。
ラバーダムは、シートなどのランニングコストが生じますが、ラバーダムシートは1枚あたり14円ほど(52枚入り730円)とたいした出費ではありませんし、
アシスタントに穴をあけてもらったラバーダムシートを歯につけるだけなので、2~3分で装着できます。
それでいて、確実に治癒率が上がるので根管治療には必須です。
ただし、根管治療で治るのは、原因が根の病気のとき。
原因が根の病気と違うときは、いくら根管治療をしても治りません。
根の病気と思って歯医者に行ったら、歯根破折だった
根の病気だと思って来院し、実際は違った場合でとくに多いのが「実は歯が割れていた」というケース。
「歯根破折」は根管治療では治りません。
※「歯根破折した歯を根管治療で治せませんか?」というご質問が大変多いのですが、歯の根が割れた場合は根管治療ではその歯を残せません。歯根破折した歯を残す方法は「破折歯接着治療」ですが、わたしはおこなっていません。
歯根破折例 その1
「左下奥が、寒い日や疲れた日にズキズキ重く感じる」とおっしゃって来院された方です。
左下奥から2番目の歯がおかしい、ということでした。
ご本人は根管治療をすれば治るのではと思って来院されたのですが、レントゲンを撮ってみると根の病気ではなく「歯根破折」でした。
歯根破折は根管治療では治りません。
相談した結果、割れている歯根を抜きました。
歯根破折をしている場合、割れている歯根を抜歯しないと不快症状はとれません。
歯根破折例 その2
「右下奥歯に違和感を感じる」とおっしゃって来院された方です。
外見上は何の問題もありません。
レントゲンを撮ると「歯根破折」していて根管治療では治せない状態。
このような「歯根破折」のケースは抜歯しないと、症状はとれません。
根の病気だと思って歯医者に行ったら、非歯原性歯痛だった
「左下に重い感じがする」とおっしゃって来院された方です。
歯をたたいても痛くはなく。以前に根の治療をした形跡もありません。
レントゲンを撮っても歯に異常はありませんでした。
このようなときは、歯に問題がなくても異常が出る「非歯原性歯痛」の可能性があり、このケースは筋肉のコリから症状が発生する「筋・筋膜性疼痛」と診断しました。
痛みが原因で歯医者に来院する方の1~6%が「非歯原性歯痛」で、「筋・筋膜性疼痛」「神経障害性疼痛」「神経血管性歯痛」などあります。
非歯原性歯痛も根管治療では治りません
筋・筋膜性疼痛のときは1~2週間経過観察すると、たいていの場合は症状が軽快します。
このケースは、1週間後には自然に症状がとれていました。
なお、根の病気、歯根破折、非歯原性歯痛のどれなのかは、レントゲンを撮らないと判明しません。
心配なら、早めにご来院ください
いずれにしても歯の痛みはつらいもの。
悩んでいても仕方ないことですし、心配なら早めにご来院くださいね。